富田俊明

プロジェクト

407
ヴィデオ、カラー、9分。
「引っ越しました・ウィークリーマンションプロジェクト」、ウィークリーマンション木場牡丹West in Part 40、501号室、東京、1998年
「Screening Japan」、Hallo!、コペンハーゲン/Rum 46、オーフス、デンマーク、2000年


97年夏の二ヵ月、中国福建省泉州市恵安県崇武鎮というところに滞在した。まだ中国が現代美術を公式にサポートしていない時代。このレジデンスのホストである崇盛石業のビル内の407号室に滞在していたが、ぼくたち滞在作家5人は、夜中に時々やってくる公安のパスポートチェックを受けなければならなかった。その部屋の窓からみえる遠浅の青い海を、ぼくはしばしばDVカムの液晶画面越しに眺めていた。
デジタル100倍ズームの向こう、オートフォーカス限界上でシルエットになった人々をみつめる。性別と年齢ぐらいに要素が還元しているのだが、動きの中に関係性があらわになる。あの二人は親子だろうかと思うとすれ違い、遠くから恋人同士らしい2人が互いにすいよせられる。あの小さい一群の人影は、子どもたちだけで遊びに来たのだろう。あの大きい子はガキ大将に違いない。朝日を反射して白く輝くあの一人ぼっちの人影は、一体どこに向かっているのだろう。ふと、407号室の周りの音が耳に入ってくる。クラクションやラジオ、鳥や子どもの声、爆竹の音、でも浜の音は届いてこない、ぼくが呼びかけても彼らは振り返らない・・・・・・自他の、彼我の境界が、それぞれ無関係な音の不調和な調和とともに混ぜ合わされていく。