富田俊明

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ハート マウンテン 第4番目のストーリー、その他
インスタレーション。 ソーレン・ビョルンによる絵、6歳の富田俊明による絵、MP3プレーヤー、ヘッドセット、テクスト、石、石器。 SPICA artでの個展、2010年


ハート マウンテン/第4番目のストーリー、その他 は、ハート マウンテン/第3番目のストーリー の続編として発表された。

この2つの個展の間の時間は、このビョルンの絵が生まれてから、その意味が見い出されるまでに経験された時間を表している。
第3番目のストーリーが、描き手であるビョルンの回想であるなら、第4番目のストーリーは、ぼく自身がこの絵とともに過ごし、絵の意味を探求した旅のお話である。第4番目のストーリーは、もがき苦しみ、裏切りとそこからの救済へと至るぼく自身の人生の時を通して初めて見出された、意味深いヴィジョンを、ビョルンに語る個人的なお話である。
ビョルンは、ぼくの見出したヴィジョンこそ、彼の絵の意味を言いあてたものと認め、ぼくがハート マウンテンの巡礼を歩き通したことを喜んでくれた。

描かれて以来8年間、この絵は少しも変わらなかった。しかし、ビョルンもぼくも、8年の間にそれぞれにいろいろなことがあった。このようにして、ストーリーは語り継がれ、忘れられ、また新たなストーリーが生み出され、語り直される。絵というものは、このようにして、ある親密な関係性の中に生じ、まだ見出されていない新しい、大きな意味が見出されるための時間と空間をこの関係性に許すものなのである。

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ぼくは、ハート マウンテン/第4番目のストーリー、その他 を2期に分けた。、招待者を対象としたクローズドなストーリーテリングに引き続き、実際の展示を行った。
リヴィング・ルームか書斎のようにくつろいだ空間から、より展示らしい空間へ。ビョルンの絵と第4番目のストーリーにより集注できるように、会場をがらりと変えた。

このような設定は全て、ハート マウンテンがぼく自身にとってどのようなものであるかを象徴している。すなわち、あるコア・イメージに吸い寄せられて回転するイメージ群の宇宙・または、見出されたばかりの星座を構成するかのような元型イメージ群としてのハート マウンテン・である。

4客の中古のソファは、漢字の<心>の4つの点を象徴し、一見バラバラなソファやクッションの色は、ビョルンの絵に対応するよう注意深く選ばれている。観客は、<心>の中に、ビョルンの絵の中に実際に座ることによって、ぼくの個人的なストーリーにコミットすることが期待されている。

石と石器のコレクションは1か所に、一直線になるようにまとめられた。これはビョルンの絵を携えて内なるハート マウンテンを巡ったぼくの巡礼の道程を表すと同時に、ぼくの個人的な時間から、石器時代の息子たち、そして父たち、冷たい岩山から昇る旭のイメージを求める彼らの心へと、時間のスケールを引き延ばすためである。父なき時代にぼくの個人的な苦悩と救済を、より大きな繋がりの中でその意味をはかるガイドラインとなるように、これらの石を並べたのである。

展示の設えは、より瞑想的にビョルンの絵を観たり、対話に聴き入ったりできるように工夫されている。


関連ブログ
HEART MOUNTAIN
http://heartmt.exblog.jp/
撮影:富田俊明