会場入り口: 巾80cm x 奥行き1500cm の暗いアプローチに入ると、『泉の話』の土地・相模原は大野台の森のざわめきや、人々のささやき声を耳にしながら、突き当りの壁に何か黄色い色面を見る。近づくほどに、それは描かれた沙漠の黄色であり、観客は自分が沙漠の泉に向って一歩ずつ近づいていることに気づく。




メイン・ホールl: 沙漠の泉に辿り着き、一歩さらに入ると、観客は突然それまでの圧迫感から解放される。子どもの目の高さに展示された母校・相模原市立大野大小学校の生徒たちの絵に取り囲まれ、観客は自分が少々大きすぎる、と感じるかもしれない。もしかしたら、ぼくが子どもたちに取り囲まれた時と同じように、楽しくもちょっと圧倒される感じがするかもしれない。
泉の在りかを記した地図: これは、ぼくが『泉の話』を語りながら、子どもたちによって描いた地図。子どもたちはなんという<アクティヴ・リスナー>だったろう、いとも簡単に物語の中に入って、泉の水を飲んだり、<カゲ>を演じてみたり。ストーリーテリングは、いつのまにか劇場のような様相を呈してきた。おかげで『泉の話』は、イメージの世界から、体で触れられるこちら側の世界にせり出してくるように感じられ、より確かなものになっていった。



ドキュメント・コーナーとアーティスト・ブック『泉の話』: 観客はここで、会場にある全ての絵が、大野大小学校のワークショップで語られ、描かれ、演じられたものであることを知る。『泉の話』はその誕生地で生まれ、育ち、語られ、聴かれ、生きられたのだ。観客は、そのドキュメントを見ている。アーティスト・ブック『泉の話』を読めば、観客も物語の世界を追体験することができた。